まるで電子の海に遍在する強めの幻覚、「serial experiments lain」
おじゃま館 長居店
2023年11月26日 20時45分
プレゼント・デイ
プレゼント・タイム
みなさんこんにちは!スタッフの蟲惑魔太郎です!
本日2023/11/26は何の日かわかりますか?そうです!「serial experiments lain」の発売25周年記念日です!
という訳で今回は「serial experiments lain」の記事です。お待たせしました。この日を待ちわびていたのだ。
↑パッケージ。この構図のパロディも多い。
さて、「serial experiments lain」は雑誌連載・アニメ・ゲームの複数メディアで展開された、メディアミックス作品群です。
この中で(内容的に)最も有名なのがアニメ版だと私は考えています。
唯一サブスクリプションサービス等で配信されており、ゲーム・雑誌と違って履修しやすい環境にあるので、これからこのコンテンツに踏み込みたい!と思う方はまずアニメから入ってみてはいかがでしょうか。
アニメ版の内容としましては、非常にカルトな内容なので私の語彙力では説明ができません……。
恐らくこのコンテンツを完璧に解説できる人間はこの世に存在しないのではないでしょうか?それでもかいつまんで解説します。(物語のネタバレは控えめ)
具体的な目的・主軸となる物語が完全には存在せず、まさに「遍在」するかのようなこのアニメは、1998年に放送されたとは思えないほどに現代社会のインターネット性を喝破しており、買春・暴行・薬物・性的行為などのアウトロー的描写――具体的に言えば気分の悪くなるいじめ描写や女子中学生のマスターベーション描写、人格の変わってしまう主人公の描写、ひどい暴力を伴う描写等、情勢的にも陰鬱で描くのをためらうようなエロ・グロ・ナンセンス――を、純度100%で臆することなく世に送り出しています。
↑アニメ「serial experiments lain」
↑主人公・岩倉玲音とlain。わたしはわたし。
さて、そんなアニメ版ですが割と視聴後は理解不能な点もあったものの、全体的に陰鬱な雰囲気をもつシリーズの割にそこそこ気持ちの良い終わり方をしたのではないかなと思っています。
オープニングを歌っているbôaの「Duvet」もかなり名曲です。
それにしてもやっぱり何がすごいって、1998年の時代にここまでリアルな未来的インターネット社会を描けたのがすごいんですよね。
観ていない方は是非視聴してみてください。
アニメ版とゲーム版はそもそも繋がっておらず、それぞれが独立した作品となっています。
という事を踏まえ、あまりにも陰鬱なゲーム版の話をしましょう。
ここから先はネタバレを含みます。ご了承ください。
さて、このゲームには明確な主人公となるキャラクターが存在せず、登場人物たちの「記録」をプレイヤーが自主的に再生していく作品となっています。
そうした断片的な物語をプレイヤー自身が繋ぎ合わせ、想像していくのです。
もはやゲームかどうか怪しいですね。
さて、どのような物語であるかを簡単に説明します。
幻聴・幻覚を感じるようになった12歳の少女、岩倉玲音は、米良柊子という新人カウンセラーが所属する研究室へ通うことになる。
しかし玲音は友達であった今日子と些細なすれ違いで仲違いを起こし、いじめのターゲットとなってしまう。
そうして不登校となってしまった玲音はインターネットの世界にのめり込むようになり、情報技術をどん欲に学び、インターネットを通じて出会った人と親密になっていく。
しかしそこでも裏切られ、人間不信へと陥る。
中学では新しく美里という友達ができ、不登校が改善されるも、とある事件をきっかけに美里は玲音の前から何も言わず転校。姿を消してしまう。
再び孤独になってしまった玲音は不登校となり、それを機に両親の関係も悪化。父親は失踪し、母親も蒸発。
そしてカウンセラーである米良柊子は、最初こそは玲音のカウンセラーとして、そして姉のような存在として玲音に接していたが、恋人と破局してしまった事をきっかけに自身の人生に迷いを感じるようになる。
玲音の事を調べていくうちに実は玲音の新しい友達「美里」は存在しないイマジナリーフレンドであることを突き止めてしまう。
糾弾した結果、玲音と上手く接することが出来ず職場でもストレスを抱え、さらには新しく出来た恋人にも振られてしまい精神を病んでいく。
そしてパソコン通信に卓越した技術を獲得してしまった玲音にカウンセリングのデータをクラックされてしまい、遂には玲音が柊子をカウンセリングするという、立場が逆転してしまう状況まで追い込まれてしまう。
玲音は居なくなった父を再現するため、機械パーツで人工的な父親を造り始める。
AIデータとして父親の記録を学習させ、その腕に抱かれる玲音のシーンは不気味ですがどこか神秘的なものを感じます。
というか、これってChatGPTとかの「まさに今現在直面している未来」ですよね。凄過ぎ。
↑ロボとーちゃん。
しかし程なくするとそんな「父親」を鉄パイプでボコボコにする衝撃のシーンが再生されるなど、狂気的で陰鬱な要素をさらに加速させていきます。
玲音はこうした一連の実験を重ねていくうちに一つの答えを見出します。
【「記憶」とは「記録」であり、人は「記録」があれば生きていける】という結論です。
そうして玲音はインターネット上に自身とは異なりつつも同じ存在「lain」を生み出し、周囲の人間にも影響を与えていく――。
その影響は柊子にまで及び、精神を汚染されてしまった彼女はlainと同じ存在となるため自殺してしまう。
玲音もワイヤード(インターネット)と一体になる為に自殺。自身をペルソナである「lain」として構築する……。
そしてその影響はプレイヤーである貴方にも。
「これからはずっと一緒だね」
と、かなり最悪の結末を迎える本作ですが、このゲームの鬱要素を確立させているのは、この物語が「ゲーム開始時点でもう既に起きてしまっている記録」であるという事です。
どうあれプレイヤーはこの物語を閲覧する事しか出来ず、断片的な物語をようやく集めて紡ぎだされた結論が最悪の結末になってしまいます。
何かハッピーな終わりはないものかと模索しても、発見できるデータの殆どが陰鬱なものばかり。
非常にレスポンシビリティの悪いこのゲームをここまでやり込み、玲音を好きになってしまった者は、しかし突き放され玲音という存在に認識されてしまう。
貴方の中にも、玲音/lainが遍在してしまっているのです。
……と、言うのが私の考察ですが、他の人と解釈が100%一致することがほぼないゲームだと思っていますので、話半分程度に聞いておいてください。
↑「lainを好きになりましょう」
さて、そんな本作品ですが後々の現代に至るまで数多くの作品に影響を与えています。
よく言われる所で言うとアイマスDSやNEEDY GIRL OVERDOSEなどです。
↑一番左のキャラクターは、lainがかなり影響を与えているとされている。
↑インターネットを基にしたネタが多く、情報的な哲学においてかなり影響を受けている。ちなみにヒロインの本名は「レイン」。
また、逆にlainが影響を受けているとされるのがR.D.レインの「好き?好き?大好き?」である。
こちらはlainの作中にも登場し、こちらもまた現代に強く影響を与えている。
↑すっかりサブカル信者御用達になってしまった本。
↑若者も読みやすいverもあるので是非。
さて、そんなlainだが25周年を記念して当時のスタッフが動き始めている。
その名も「AI lain」。つまりChatGPT的なアレだ。
いやいや、こんなのどう考えてもlainが予測した未来じゃん!時代が追いついた!
恐らく当時やりたかったことをそのまま出力してきたのがこの「AI lain」になりますので、この記事を読んだ後は是非触っておきましょう。
そんな「serial experiments lain」ですが、当店に在庫があるのかと言うと……。
ございません!!大変申し訳ございません!!!
あまりにも貴重なソフトすぎて当店まで出回っていないのです……こんなに熱量がある店員がいるというのに……。
という訳でもし「serial experiments lain」を持っていて当店に売ってみてもいいかな~と思った貴方!
ぜひ当店にお売りください!
という訳で、語りすぎた気もするのでこの辺で〆たいと思います。ありがとうございました。
これからは、ずっと一緒だね。